霞が関から情報流出 「安倍一強」の横暴で動き出した森友、加計疑惑

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霞が関から情報流出 「安倍一強」の横暴で動き出した森友、加計疑惑

 森友学園の籠池泰典前理事長にXデーが迫っているという。系列幼稚園で補助金約6千万円を不正受給した疑いがあると大阪府が大阪地検特捜部に告訴したのだ。「籠池砲」や加計学園問題を封殺し、共謀罪導入、2020年改憲へと突き進む安倍晋三首相だが、自民党内でついに「一強」に亀裂が……。

「森友の補助金問題はもっと早く告訴状が大阪府から出る予定だったが、国会との絡みもあり、水面下で府や市と大阪地検がやりとりしていたようだ。補助金問題なら昭恵夫人と関係ないので、“国策捜査”と揶揄されることもなく、地検もやりやすい。すでに捜査態勢を組んでおり、早い段階で動くかも」(捜査関係者)

 その森友学園の籠池氏は5月16日、安倍昭恵首相夫人が名誉校長に就任していた「瑞穂の國記念小學院」の設計業者と弁護士が交わした「約3メートル以深には廃棄物がない」と記されたメールなど内部資料を民進党に提出。近畿財務局がこれまで深さ約9.9メートルまでゴミが埋まっていたため約8億円を値引きした、と主張した根拠が根底から崩れかねない“爆弾”だった。

 さらに近畿財務局が昨年、土地の売却価格の評価を不動産鑑定士に依頼した際、ゴミ撤去費約8億円のほかに、高層建築の地盤改良費として約5億円も差し引くよう求めていたことが、朝日新聞(22日付)の報道でわかった。

 当時、森友の小学校は低層の2階建(一部3階建て)の設計で着工済みで、売却価格が低くなるよう近畿財務局があえて過大な条件を示した可能性があり、不動産鑑定士に断られたという。

 森友疑惑に呼応するかのように、安倍政権に新たな“爆弾”が霞が関からも投下されている。

 安倍首相の40年来の“お友達”である加計孝太郎氏が理事長を務める学校法人「加計学園」(岡山市)が愛媛県今治市の国家戦略特区に獣医学部を新設する計画について、文部科学省の内部文書とみられる資料が朝日新聞(17日付)で報じられたのだ。

この文書は、内閣府の担当者が計画の早期実現について「官邸の最高レベルが言っていること」「これは総理のご意向だと聞いている」などと発言したことが克明に記録されている。安倍首相は国会で「(加計学園からの相談や官邸からの圧力は)一切ない」と否定していたが、森友学園問題に続き、官邸の関与が疑われる事態となったのだ。

 文書には見落とせない点がある。自民党獣医師問題議連会長でもある麻生太郎財務相についても度々、触れられているのだ。<獣医学部新設に強く反対している><(麻生大臣は)総理から本件関係で何も言われていない。だからもう(やらない方向で)決着したのだと思ってたくらいだ>

 松野博一文科相や萩生田光一官房副長官が<衆院福岡6区補選を終えた後に動くべきではないか>と発言したとも記されている。これは昨年10月23日に投開票があった衆院福岡6区補選のことで、菅義偉官房長官が推した鳩山二郎氏と、麻生氏が推した蔵内謙氏が激突。鳩山氏が大差で勝利した。文書では蔵内氏は<日本獣医師会長長男>と、わざわざ注意書きも記されていた。ここでも、官邸と微妙な距離にある麻生氏の動向を官邸が警戒している様子がうかがえる。

 さらに、石破茂衆院議員が<党プロセスは今後どうなるのか。党プロセスを省くのはおかしい>と手続きに疑義を唱えていること、党の意思決定の場である総務会に地元の愛媛県選出の村上誠一郎衆院議員が在籍していることなどが書かれていた。いずれも、安倍首相のやり方に反対意見を述べる“うるさ型”たちだ。

 一連の資料は文科省から流出したとされる。国会で加計問題を追及してきた自由党の森ゆうこ参院議員がこう語る。

「3月9日から加計学園の問題を質問してきました。4月5日朝、文科省の担当者は翌日の質問用に、詳細な経緯を資料にして提出すると約束しましたが、夕方、断りの電話がかかってきました。内閣府からの圧力があったようです。文科省から流出したのは、法治国家を否定するやり方に反発したからではないか」

 ところが、安倍政権はまたも真相をうやむやにして“逃げ切り”を狙う姿勢のようだ。松野文科相は19日の会見で、文科省の調査では資料の存在を確認できなかったと説明。だが、呆れたことに官僚個人のパソコンは調べなかったというのだ。

 ある文科官僚はその裏をこう語る。

「あの文書は私たちがメモを残すときの書式です。同僚のほとんどは本物だと思っている。文科省としては元々、加計学園の申し出に獣医学部の新設は特区になじまないと打ち出していた。それを変えるのは、よほど劇的なことがないとあり得ない。国の方針を変えるんですからね。今回の文書についての省内調査も、『記憶がある?』『うーん……』『じゃあないんだね』という調子で、最初からないことにしたいムードでいっぱいだったと聞いている」

 政治アナリストの伊藤惇夫氏がこう語る。

「森友学園の件も加計学園の件も安倍首相が説明責任を果たせているとは思えないが、安倍一強の国会で知らぬ存ぜぬで押し通せば数の力で押し切れる。支持率も下がらない状況になってしまっている」

 実際、いまだ48%(16日付朝日新聞)と底堅い内閣支持率を背景に、安倍首相は強気一辺倒だ。

 象徴的なのは改憲論議だ。首相は「日本会議」の関連団体が主催する集会(5月3日)にビデオメッセージを送り、憲法9条に自衛隊の存在を明記すること、20年に改正憲法の施行を目指すことを突然ぶち上げた。ジャーナリストの田原総一朗氏が語る。

「昨年9月に安倍首相と会った際に改憲について聞くと、『改憲の必要はなくなった。安保法で集団的自衛権の行使を認めるまでは米国がうるさかったが、認めたらまったく何も言ってこなくなった』と私に明かした。もう改憲しないのかと問うと、『できれば憲法9条の中で自衛隊の存在を認めさせたいと思っている』と答えました」

 では、なぜ20年施行なのか。東京五輪の年であることは安倍首相がメッセージでも言及していたが、もう一つ考えられることがある。

 政府は19日、天皇の退位のための特例法案を閣議決定した。成立すると、18年末に天皇は退位する。新元号となる19年に憲法改正の発議と国民投票を行えば、20年の施行が可能となるのだ。

「今上天皇は護憲というお気持ちを強く持っており、靖国神社にも参拝しない。安倍首相の思想とは“対立”関係にある。その天皇が退位し、影響力がなくなったタイミングで改憲したいというシナリオはあるでしょう」(田原氏)

 だが、首相の強引なやり方に自民党内から批判の声が次々と上がっている。

「麻生さん、二階(俊博)幹事長ら重鎮は2020年改憲について寝耳に水だった。首相は菅官房長官、今井(尚哉)筆頭首相秘書官ら一部の“お友達”にだけ相談していた。森友問題では財務省あげて首相を庇(かば)ったのに、と堪忍袋の緒が切れたようです。“乱”が起こらなければいいが……」(政府関係者)

(本誌・小泉耕平、大塚淳史/今西憲之)

※週刊朝日 2017年6月2日号記事に加筆

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