立憲主義を守るために安倍政権とたたかう明仁天皇を見殺しにしてはならない

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立憲主義を守るために安倍政権とたたかう明仁天皇を見殺しにしてはならない

前書き

私の以前から親しい方々は、私の世界観を「左翼思想」や「革新」だと思っている方が多いようです。確かに学生のころはマルクスやエンゲルスの書籍をよく読んだものです。マルクスの「ドイツイデオロギー」や「経済学哲学草稿」には感動しました。選挙では社会党や共産党に投票することが多かったように思います。でも参院選は「革新自由連合」などミニ政党へ投票していましたが、自民党に投票したことは確かになかったような気がします。
そんな私にとっても「天皇制」は、実にやっかいなものなのでした。「天皇制に反対か賛成か」と、聞かれたら、私は「反対」と答えていました。「民主主義社会に於いては人はみな平等であるべき」だし、「貴い人が居れば卑しい人も存在する」という論理から「天皇制は部落差別と表裏一体」と考えていたからです。でも、それ以上に「天皇制」を自らに突き詰めて考えたことはありませんでした。
しかし、ここに来て、安倍政権と激しくぶつかっている明仁天皇のやむぬやまれぬ発言に対して「知らぬふりをしていいのか」と考えるようになり、「私の中のタブーへ一歩踏む込むべきだ」と思ったのです。私の文章に「小坂は変質してしまった」と思う方がいるかもしれませんが、これは何ものにもとらわれることなく、私自身が考えた私の論考です。ただ私は「緑の党」の会員ですから、「保守」でも「革新」でもありません。多様性を認め合う自由主義論者です。

8月8日天皇発言は宮内庁のクーデター

2014年7月31日の安倍政権による「集団的自衛権は合憲」を閣議決定してから、安保関連法案の成立や駆けつけ警護ができるようにした安倍政権によるこの間の解釈改憲の動きに対して、明仁天皇は「憲法9条をないがしろにするな」と訴え続けてきました。昨年の70年談話で安倍首相が「いったいいつまで子孫に反省させ続けなければならないのか」と言って、「反省」の言葉を省略したのに対して、明仁天皇はしっかり「反省」の言葉を伝え続けました。
また、小泉政権時代に「女系天皇制」の議論を明仁天皇が提起したことも男の孫が生まれたことで途切れてしまいました。
明仁天皇は2015年の元旦に「本年は終戦から70年という節目の年に当たります。 多くの人々が亡くなった戦争でした。 各戦場で亡くなった人々、広島、長崎の原爆、東京を始めとする各都市の爆撃などにより亡くなった人々の数は誠に多いものでした。この機会に、満州事変に始まるこの戦争の歴史を十分に学び、今後の日本のあり方を考えていくことが、今、極めて大切なことだと思っています」と語り、安倍内閣の歴史歪曲主義を牽制する発言を行ったのです。
そして今年8月8日の「生前退位」発言につながりました。これまで「生前退位」の意向を天皇は何度と官邸には要望してきたそうです。しかし、ことごとく無視されたそうです。そこで、天皇は宮内庁長官に「是が非でも国民へ発言をさせろ」と要求してクーデターは決行されたそうです。これを聞いた安倍首相は激怒して宮内庁長官は即刻クビにしたのです。
サンデー毎日によると、安倍首相が生前退位に反対した理由は「生前退位になれば、退位と新天皇の即位で来年1年間をそれに使われてしまうので憲法改正議論ができなくなる」という理由からだそうです。ひょっとすると、天皇は安倍による憲法9条改正を阻止するために生前退位発言をしたのかもしれません。少なくとも天皇は直接国民に訴えることで官邸と勝負に出たのです。

生前退位を潰そうとする「官邸=日本会議」

2014年に「集団的自衛権は憲法違反ではない」と、拡大解釈する安倍政権が自分たちに都合の悪いことについては憲法解釈を縮めてが「憲法上生前退位は無理」と言うのです。しかも国民の9割以上が「生前退位」に賛成するという中で、官邸は国民的な幅広い意見を反映するといいながら、大半の人間を「日本会議」の学者で固めた有識者会議でこの議論を潰そうとしているのです。
「日本会議」なるものが何なのかを振り返る必要がありますが、紙面の都合上多くは書けませんが、安倍政権の閣僚の8割以上が日本会議の会員です。そして安倍晋三の思想は日本会議と一体です。生前退位は「皇室の伝統、国体を破壊する」とか、東大名誉教授で日本会議副会長の小堀桂一郎氏は産経新聞(7月16日付)で「天皇の生前御退位を可とする如き前例を今敢えて作る事は、事実上の国体の破壊に繋がるのではないかとの危惧は深刻である。全てを考慮した結果、この事態は摂政の冊立(さくりつ)を以て切り抜けるのが最善だ、との結論になる」と反論するのです。
また、櫻井よしこなど日本会議のメンバーは言葉は柔らかですが中身は「天皇に好き勝手な真似をさせてどうする。生前退位などさせてたまるか」というような内容の発言を続けているのです。戦前のような「天皇絶対君主国家」をめざすという連中が天皇を崇拝するのではなく、天皇に対して思いやりのない冷酷な発言を繰り返しているのです。
これはなぜなのでしょうか。安倍晋三など日本会議なる連中は戦前のような軍事独裁国家を作るために天皇を利用しようとしているだけなのでしょう。

どのような天皇制を作ればいいか

昭和天皇裕仁氏には戦争責任がありました。そのため彼は敗戦と同時に少なくとも「生前退位」を行うべきでした。そして明仁氏が象徴天皇に即位すべきだったのです。しかし、GHQは混乱を招く恐れを避けるために昭和天皇の戦争責任を問いませんでした。非常に分かりにくい敗戦処理だったのです。しかし、平成の現明仁天皇には戦争責任はありません。
しかし、どう考えても80歳の後期高齢者に公務を強いることは無理があります。しかも江戸時代までは生前退位は当たり前に行われていたのですから、伝統的にできない理由はあり得ません。日本会議が危惧するように、天皇を拒否する権利も与えるべきですし、女系天皇制も取り入れるべきです。そして、最も問題なのは天皇に人権が与えられていないことです。天皇も人間ですから人権が少し制約はされたとしても基本的人権は付与されなければなりません。選挙権も与えるべきです。被選挙権は無理でも天皇が投票に行くことは投票率を上げるためにも好都合です。もちろん誰に投票したかなど政治活動はできませんが。
そして英国のように宮内庁も民営化すべきです。
今回の発言を取って「天皇の政治発言」と批判する日本会議の連中がいますが、元々天皇が何を喋ったとしても「政治性のない発言」などあり得ません。全ての発言には一定の政治性は孕んでいるのです。だから直接政治に絡むことは発言できないが一般的なことは発言できないというのはおかしいのです。英国の王室は自由に政治的な発言をしていますし、マスコミも王室批判をしています。日本は皇室への発言は「はれものを触るよう」に改まって丁寧語を使うのはおかしいのです。自由に皇室批判をしてもいいのです。もっと皇室にも自由を与えるべきなのです。

明仁天皇は「原発再稼働に反対」

この発言が事実かどうかは私には調べる術はありませんが、小泉純一郎氏の著書「黙って寝てはいられない」の中(151P)で城南信用金庫の元頭取の吉原毅氏は「天皇陛下も2016年の新年の挨拶で『日本は地震が多い国です。危険なことがないように』と仰っています。『原発は再稼働すべきではない』とか直接言えなくても、お言葉の端々からそう感じます。現に皇室関係者からも、天皇陛下は『原発再稼働はすべきではない』という考えです、ということを聞いています。日本国のことを考えたら『原発ゼロ』というのは、日本国を思う人の結論なのです」と書いています。
明仁天皇を英雄視するのは問題ですが、一人の人間として「誠実に生きている」と私には思えます。明仁天皇を過大に神格化することなく、日本の1つの伝統として天皇家が続くことは許されるのではないでしょうか。しかし皇室を自分の都合のいいように利用しようとする安倍政権と「日本会議」の企みには断固として反対しなければならなりません。そして天皇ももっと自由に喋るべきです。もちろんマスコミや国民も天皇制がどうあるべきかを自由に議論すべきです。それが本当の自由な民主主義社会なのです。

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