農作物としての大麻に関する書籍を書き、正確な情報発信をしたい

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農作物としての大麻に関する書籍を書き、正確な情報発信をしたい

はじめまして。大麻博物館館長の高安淳一と申します。当博物館が、2001年に栃木の那須高原にオープンしてから、15年が経過しました。

「え、大麻?」という方も多いかも知れませんが、実は大麻は、栃木が誇るべき農作物です。当館では「有用な農作物」として、また「日本人のアイデンティティーとも深いつながりを持つ植物」としての大麻について、資料の収集や調査などを行いつつ、微力ながら情報発信を行ってきました。しかし、世間の大麻に関する誤解や偏見は依然として強く、「農」として、「日本の伝統」としての大麻は、危機的な状況を迎えています。

かつて「大麻」は、日本の伝統文化・生活文化に密接な関係を持つ農作物でした。

大麻は、「麻」「ヘンプ」などの別称を持つ、アサ科の一年草です。違法な薬物として認識されることが多いこの植物ですが、日本では縄文時代の遺跡から大麻の種が見つかるなど、古来より親しまれ、繊維を衣服や縄・釣糸・漁網に、種を食料に、茎を建材に、葉や根を薬用にと幅広い用途で利用してきました。主要な作物であった名残は、「麻」と名がつく、多くの地名や人名にも残されています。

また、神道の世界では、その繊維を清めの道具として用い、伊勢神宮のお札は、現在も神宮大麻と呼ばれるなど、日本の伝統文化・生活文化と非常に密接な関わりを持つ「農作物」でした。?

そもそも、古くから日本で栽培してきた品種は「繊維型」といって、「薬用型(=マリファナ)」と異なり、酩酊作用がほとんどない品種です。しかし、工業化の波に乗り遅れたことや、法律の影響(現在、大麻の栽培には、都道府県知事が発行する大麻取扱者免許が必要です)、違法な薬物というイメージの固定化により、1950年代には国内に25,000軒あった大麻農家が、現在は約40軒にまで減少しています。日本で合法的に栽培されているものは、酩酊しないよう品種改良されたモノにも関わらず、その価値や有用性は忘れ去られているのです。
大麻博物館では、長く継承されてきた「大麻の文化」を残そうと取り組んでいます。

大麻博物館のある栃木県では、陶酔作用がないよう改良された品種「とちぎしろ」の栽培を現在も続けており、国内生産の約90%を占める大麻の一大産地です。

そして那須高原にある大麻博物館では、大麻に関する様々な情報を発信しています。近年、力を入れているのは「麻糸づくりの継承」です。日本では古来より、大麻が繊維の主流でしたが、現在、国内での麻糸流通量はほぼゼロ、麻糸生みの技術を継承しているのは、わずか10名以下と言われています。この状況を打破するため、2012年より「麻糸生み後継者養成講座」を定期的に開催しています。

大麻糸の特徴は、しなやかで、使い込むほど柔らかく、ちょっとやそっとのことでは破れない強さが特徴です。繊維自体がチューブ構造となっており、夏涼しく、冬暖かく日本の気候風土に適しています。


正確な「大麻」の知識を広めるため、「伝統」「資源」「農」という切り口で書籍を作ります!

非常に有用な農作物であるにも関わらず、世間の大麻に関する誤解や偏見に影響されて活用がされなくなっていく現状は、あまりに残念なことです。そこで私たちは、大麻について全く知識がない方にとっても分かりやすい「入門編」であると同時に、私たちの情報収集や調査の集大成とも言える「決定版」となる書籍の出版を決めました。

出版に向け、造詣が深い方たちと連携すると共に、新たに考古学や農学・神道学といった分野の方々へ取材も行います。日本の歴史に見る大麻、大麻栽培、自然布としての大麻、神道における大麻の位置づけ、大麻を取り巻く現状と課題など、大麻に関連する多様なテーマを取り扱う予定です。

これまで大麻に関する書籍というと、サブカルチャー的にマリファナを扱った書籍などはあるものの、「伝統」「資源」「農」といった切り口の書籍は、流通していません。誤解や偏見を解消していくためには、こうした書籍の出版が、非常に重要な取り組みだと考えています。





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